JR西日本は11日、維持が困難なローカル線の収支状況を初めて公表し、地域と課題を共有して代替交通への検討も含め、沿線自治体などと幅広く議論を進めていきたいとの考えを示した。県内では、きのくに線の白浜―新宮間が対象となっており、赤字額は公表された全30区間中、2番目に大きい。

 公表されたのは、一日の平均利用者数が2000人未満の区間で、JR西日本が管轄する近畿・北陸・中国地方の17路線30区間。うち近畿エリアでは、白浜―新宮間を含め、兵庫県の姫新線や加古川線などの6区間が公表された。

 白浜―新宮間の収支状況をみると、2018年から20年度の営業損益の平均額は29・3億円の赤字で、30区間の中でも2番目に大きい赤字額となっている。また、収支率(費用に対する収入の割合)は15・5%で、100円の収入を得るのに647円の費用がかかるという算出結果となった。これらの数値は年々悪化している。

 ローカル線の収支が悪化している背景として、全国的に自動車の保有台数が増えていること、高速道路の整備が進展してきたことなどが挙げられ、さらにコロナ禍が追い打ちをかけた格好。JR西日本はこれからの地域旅客運送サービスのあり方として、バスやタクシーの活用なども積極的に検討する姿勢だ。

 公表に際し「大量輸送という観点で鉄道の特性が十分に発揮できていない。線区の特性や移動ニーズを踏まえ、最適な地域交通体系を地域の皆様とともに創りあげていく必要がある」と説明し、廃線前提ではないことを強調している。

 きのくに線では、10月に再運行が決まった観光列車「銀河」で観光客の利用促進や、今月1日に新宮―御坊まで利用可能となった「サイクルトレイン」で地元客の利用促進を図る取り組みも行っている。