左から花柳勲麿さん、花柳鶴恋(澤越)さん、花柳妃鶴(平田)さん

 この春、美浜町の松洋中学校を卒業した澤越歩恋(ふう)さんが、日本舞踊花柳流の名取試験に合格した。花柳妃鶴(ひづる)こと平田千鶴さん(51)の下で1歳半から踊りを始め、15歳にしてすでに芸歴は14年。試験は通常の初級を飛び越えて上級への挑戦となったが、高校受験勉強の合間に師匠とともに稽古を重ね、卒業を前にうれしい合格通知が届いた。

 澤越さんの初舞台は2009年10月、御坊市民文化会館大ホールで開かれた宝扇会の発表会。3歳で手習い曲の「菊づくし」を1人で最後まで泣かずに演じきった。その後、10歳のときには大阪の国立文楽劇場で花柳枝芽こと籔内美和子さん(美浜町長)が舞う「お夏狂乱」の脇役の里の子を演じ、20年10月には3度目の文楽劇場で師匠の師匠である花柳勲麿(いさまろ)さん(70)と初の主役の演目「連獅子」を舞った。

 名取になるのは小さいころからの夢で、受験資格の満15歳になるのを待って志願。通常は初級、上級と段階を踏んでの受験となり、澤越さんも昨年春から初級の稽古を続けていたが、数カ月後に勲麿師匠から「踊りの力は十分ある。上級を受けなさい」と促され、急きょ、男踊りの常磐津「廓八景」など初級より長く難しい課題2曲に切り替え、高校受験と並行しての勉強、稽古の日々が続いた。

 試験は昨年12月、コロナ禍のため異例のビデオ審査となり、大阪の勲麿師匠の稽古場で緊張の一発撮りを収録。家元らによる審査の結果、中学卒業式前の今月3日に合格の知らせが届いた。

 もらった名前は、師匠の「鶴」と自分の「恋」を合わせた鶴恋(かくれん)。澤越さんは「お稽古は大変でしたが、妃鶴師匠や勲麿師匠の言う通り頑張って、試験は気合十分で臨みました。合格できて本当にうれしいです」と笑顔。名前については「まだピンときませんが、お名前をいただいたからには、これまでのように上手な素人ではいられません。踊りを見た方からさすがは名取と思っていただけるよう、さらに精進したいと思います」という。

 師匠の平田さんも初の弟子の名取誕生に喜びいっぱい。「古きよき日本の伝統文化を後世に伝えていくため、踊りの技術だけでなく、いろんな教養も身につけていってもらえれば」と話している。