収穫時期が1月と遅い新品種「あおさん」

 湯浅町の農家が熟期の遅い温州ミカンの新品種を発見し、県が調査、品種登録支援を進めている。1月上旬から中旬が収穫時期となる極晩生で、見つけた農家の屋号から品種名は「あおさん」と名付けられた。全国的にもこの時期に収穫できる温州ミカンは他になく、有利販売が期待できるという。

 有田川町の県果樹試験場によると、湯浅町の農家湯川知明さんの父親が1969年に購入した興津(おきつ)早生の苗木の中に、枝変わりした温州ミカンがあったという。湯川さんは13年に同試験場に情報を提供。果実調査を行ったところ、熟期が遅いだけでなく、腐敗の原因となりやすい果皮と果肉の間に隙間ができる浮皮の発生が極めて少なかった。ほかにも、晩生の温州ミカンは一般的に〝フクロ(じょうのう膜)〟が厚いが、新品種のあおさんは早生ミカンのように薄く、食べた時に口の中にフクロが残りにくく食味も優れていることも分かった。


 発見した湯川さんの屋号が「青三」だったことから「あおさん」と名付けられ、昨年2月に品種登録を出願。順調に進めば、2、3年後に新品種として登録されるという。


 温州ミカンは通常、9月中旬ごろから極早生の収穫が始まり、晩生の品種も年内で終了するが、今回の「あおさん」は年明けの1月に収穫できる。県は「柑橘の少ない時期に出荷できるし、食味もいい。県のミカン生産量は全国1位だが、さらにブランド力の強化につながることが期待できる」と話している。


 あおさんの苗木は2024年春以降に流通開始となる見込みで、県内の農家を対象に販売される。