発行した著書を手に西川さん

 印南町小原の西川寛さん(70)がJAありだ職員時代に有田みかんの研究に携わった34年間の記録をまとめた「たかがミカン、されどミカン」が、農文協プロダクションから出版された。有田みかんの価格がまだ安かった当時から糖・酸度の測定など手作業での調査、研究を続け、高品質のミカン作りに貢献。その時に得た貴重なデータも紹介されており、日本を代表するブランドミカンの歴史をひも解く一冊となっている。

 西川さんは農家の生まれで、南部高校農業科を卒業後、1972年5月に旧県果実農業協同組合連合会に技術員として採用され、旧有田中央農協に配属。76年10月から同連合会が解散したため、そのまま有田中央農協の職員に。99年10月には同農協を含む有田地区の6農協が合併して誕生したJAありだの職員となり、2006年1月、55歳の時に早期退職。昭和から平成をまたぐこの間、日本一のミカン生産量を誇る有田地域でより品質の高いミカン作りに半生を費やし、課長職時代には農業雑誌に自身の研究成果が掲載されたこともあった。

 退職から5年後、難病のパーキンソン病の診断を受け、体の自由がききにくくなってくる中、「まだやりたいことがたくさんある」と、自身を奮い起こす思いを込めて住居をリフォーム。その時にJA職員時代に有田みかんなどを調査した資料が入った段ボールを見つけ、「少しでもこれからの農業振興につながれば」と、本にまとめて出版することを思い立った。

 著書はA5判、165㌻、定価1800円(税込み)。サブタイトルは「有田ミカンと歩んだ34年」。西川さんが有田みかんの調査、研究に携わるようになった経緯や、当時の温州ミカンの市場単価、気温や降雨時期との関連、極早生ミカン(宮川早生)の産地化を目指した果実分析、「味一みかん」の開発などについて解説。標高差によるミカンの糖度、酸度などの調査結果は、他にない貴重なデータとなっている。

 出版に際し「一介の技術者として粉骨砕身、努力してきたつもり。技術革新の速い時代で、一昔前の資料など現在では通用しないと思いながらも、有田みかんの歴史の一コマとして本に残しました。これから農業を始める人やいまの技術者に少しでも参考になれば。有田みかんの調査に協力していただいた組合員や職場の皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです」と話している。連絡先は℡0738(46)0264。