和田さんの肖像画を届けた新井さん㊧と片山館長

 「東京にオリンピックを呼んだ男」として知られる御坊市の名誉市民第1号、故和田勇さん(2001年死去、享年93)のルーツを探るために来日したロス在住のジャーナリスト新井淳蔵さん(47)=神奈川県川崎市出身=が、15日に御坊市中町2丁目の寺内町会館(片山隆館長)を訪れ、アメリカから贈られた和田さんの肖像画を届けた。

 和田さんはワシントン州ベリンハムで食堂を営んでいた両親のもとに生まれ、幼少時を両親出身地の御坊市名田町祓井戸、由良町戸津井で過ごした。成長してアメリカでスーパーマーケットを経営。1964年のオリンピックを東京へ招致するため私費で南米を訪ねるなど大きく尽力した。晩年はカリフォルニアに「敬老ホーム」など、日系人高齢者のための老人ホームを次々に開設。84年にその功績で吉川英治文化賞を受けた。しかしその後、敬老ホームは売却。現在は「日系人高齢者を守る会」が、「日系高齢者が安心して暮らせるように願っていた和田さんの思いを生かしたホームを復活させたい」と活動しており、新井さんはそのためのPR映像を担当。撮影のため、昨年10月から来日していた。

 和田さんの肖像画は、2000年頃にロス在住の画家坂田英夫さんが描いた作品。敬老ホームを運営していた非営利法人「敬老」のCEO、ジーン・カナモリさんの所有で、和田さんの腹心的な存在だった小林良廣さんが「あの絵を譲り受けたい」と希望。カナモリさんから贈られることになったが、寺内町会館の存在を知って「和田さんの故郷の御坊市にそういう施設があるなら、そちらに展示してほしい」と寄贈されることになり、今回取材で来日する新井さんに託された。カナモリさんも来日を希望していたが、コロナ禍でかなわなかった。

 新井さんは14・15の2日間で、和田さんが幼少期を過ごした由良町、名田町などを取材。50周年事業で「和田勇賞」を創設するなど深い関わりを持つ御坊ロータリークラブ(高辻幹雄会長)が取材をセッティングするなど協力した。和田家の菩提寺である南塩屋の光専寺、漁港なども巡り、当時の和田さんを知る人にも話を聞いた。「私自身、若い頃には和田さん宅に居候させてもらったことがあり、和田さんはもう亡くなったあとでしたが、奥様の正子さんに大変お世話になりました。とても頭のいい女性でした。今回の取材では博愛園など高齢者施設も訪問し、サービスの行き届いた日本の施設の様子も見学できました。現在、アメリカでは新1世と呼ばれる、戦後になってから渡米した人たちが高齢となっており、和田さんが目指したような日本人らしいサービスを受けられる施設を必要としています。敬老ホームのような施設が復活できるように、いい映像にしたいと思います」と話している。

 肖像画は大きな油彩画で、鮮やかな黄色、青、緑を背景にスーツ姿の和田さんが描かれている。片山館長は「立派な絵をいただき、大変ありがたく思っています。より一層、和田さんのことを広く知ってもらえるきっかけになればと思います」と話している。寺内町会館では今後、額装して展示する。