今年も見ごたえたっぷりだった箱根駅伝。結果は青学の強さが際立ったが、終盤まで中央や帝京が上位争いを演じたのが印象に残った。初出場を果たした駿河台では31歳の中学教師ながら休暇制度を利用して同大に編入した今井隆生選手が出走、6年前に中学校で教え子だった永井竜二選手への師弟たすきリレーもあって、話題に事欠かなかった。ただ、筆者が個人的に最も気になっていた選手の姿はなく、各校16人の登録選手にも名前はなかった。大会後、いくつかの大手新聞に記事が掲載されていたので飛びついて読んだ。

 その選手は、創価大学4年の小野寺勇樹選手。昨年の箱根駅伝、創価大は初の往路優勝を果たし、復路も9区までトップを快走。最終10区を任された小野寺選手は2位駒大と3分19秒差でたすきを受けたが、逆転を許し2位でゴールした。強くなって戻ってきた姿を見ることはかなわず、気になっていた。記事によると、昨年は思うように体が動かなかったことや、ショックの中でも周囲の温かさに助けられ、絶対リベンジを目標に練習に打ち込んだこと、多くの仲間が自己ベストを連発して登録メンバーから外れたことが記されていた。

 今年の箱根にランナーとしては出場できなかったが、9区を走った仲のいいチームメートの付き添いとして参加した。4年間、苦しいことがほとんどで、納得の走りは出来なかったが、社会人となってこの経験を生かすとのコメントに、強くなっていた小野寺選手を紙面越しに見ることができ、胸が熱くなった。結果ではなく、打ち込んできた時間こそが財産だと、あらためて気づかせてもらった。今後も活躍を。  

(片)