昔の暦では1月から3月が春。1月は初春、きょう1月15日は小正月。「年神様」にお供えしていた鏡餅を下ろし、ぜんざいなどでパワーを頂く。冬のさ中の厳しい寒さを、イベント的な行事で心を浮き立たせて乗り切る知恵もあったのだろうか◆子どもの頃、冬には必ずひどい鼻風邪をひき、さらに重度のしもやけに悩まされた。両手が赤紫に腫れ上がるばかりでなく、皮膚が破れジュクジュクして大変なことになる。強度の偏食で肉と卵と果物ばかり食べていて血の巡りが悪かったせいかもしれないが、右手にも左手にも包帯をぐるぐる巻きにして登校していた。鉛筆が持ちにくいし、何よりも目立つのが嫌で、冬は大嫌いな季節だった。成長に連れて食べられるものが増え、そのおかげかしもやけやひどい鼻風邪とは縁が切れた◆一昨年1月の、新型コロナウイルス感染症発生の報道から2年。感染状況にすべてが左右される世界は、まるで長い冬に入ったままのようだ。変異型のオミクロン株はきわめて高い感染力を持つが重症化率は比較的低いとされ、流行の形態が「パンデミック(世界的大流行)」から「エンデミック」に移行する可能性がいわれているとの記事を見た。エンデミックという言葉は初めて知ったが、「特定感染」と訳され、「ある感染症が一定の地域に一定の罹患率で日常的に繰り返し発生すること」という◆真冬から春の兆しを感じるような局面の変化に思えるが、驚くほどの急激な感染者の増加を考えればもちろん安心できる状況ではない。「冬来りなば春遠からじ」と英国の詩の一節にあるが、春を無事に迎えるためにも、まず冬をしっかり乗り切る必要がある。むしろ、気を引き締めて、着実に乗り切らねばならない正念場かもしれない。  

(里)