リニューアルした店舗で黒田さん㊧と酒井さん

 日高川町鐘巻の道成寺参道にあるレストラン雲水(黒田量也社長)が1日、土産物販売スペースを全面改装してリニューアルオープンした。老舗の伝統を守りつつ、若い世代も入りやすい内装のデザインは、大阪市から同町入野に事務所を移転し活動している酒井将守さん(48)が手がけた。

 雲水の創業は1910年。黒田さんは、110周年を迎えた2年前に何かしたいと考えていたが、新型コロナのあおりを受け、観光、飲食で大きな打撃を受けた。酒井さんも、大阪市内で店舗の内装やイルミネーションなどのデザインを行ってきたが、コロナの影響で仕事が激減。打ち合わせなどはリモートで済むことも分かったため、新しい環境で取り組もうと昨年7月、県の空き家バンクに登録のあった入野の家を事務所にしてデザイン事務所「Design C(デザインシーメジャー)」を開業した。

 空き家バンクを活用した移住促進に力を入れる日高川町の移住者支援や地域のつながりで出会った2人は、雲水の土産物販売フロア79平方㍍のコロナ後を見据えた改装に取り組むことになった。酒井さんは、老舗店の伝統を守りつつ、コロナのような状況でも継続していくために「伝統と革新」をコンセプトにした内装デザインを提案。漆喰の壁や腰壁など和風テイストの中にも、休憩室との間にある壁を釣り鐘型に抜き、小窓を設けるなどアクセントも。参拝後の客から一番最初に目につく北側の入り口付近には、天井からミニチュアの釣り鐘を下げ誘客。南側には昔ながらの和ダンスを模した会計カウンターを設置し、和モダンを演出。買い物客がゆったり座れるベンチなども多く設けたほか、ディスプレイも使い込んだ木箱に名物の釣り鐘まんじゅうのバラ積みなど、新しい見せ方を提案した。

 黒田さんは「新型コロナで観光も飲食も苦しい2年間になりましたが、改装に合わせて釣り鐘まんじゅうの新商品も開発し、伝統を守りながら、将来につながるよう今後も頑張っていきます」と前を向き、酒井さんは「これからも、地域の皆さんと一緒に楽しめるようなことができれば」と話していた。