2つの商品を前に清水さん

 かつお節発祥の地の印南町を盛り上げていこうと、こだわり野菜「SHIMIZU FARM(清水ファーム)」の清水裕子さん(46)=印南=が、かつお節を使った「ポン酢」と「食べる出汁(だし)」を考案、商品化した。同町ではこれまでかつお節にちなんだ特産品や土産物がなかったため、町をPRする新たな名物として期待されている。

 かつお節は江戸時代、印南漁民の角屋甚太郎が製法を開発し、森弥兵衛が枕崎、印南與市が伊豆・房総へ製法を伝授して全国に広まった。同町では角屋甚太郎の旧暦の命日となる10月4日を印南漁民顕彰の日とし、関係者が毎年献花式を行っている。また、町商工会では2019年7月、地域資源活用推進委員会を立ち上げ、かつお節発祥の地のブランド力を生かした魅力発信拠点づくり計画を推進。こういった取り組みはあるものの、町内でかつお節やそれにちなんだ加工品などの生産が行われておらず、課題の一つになっていた。

 清水さんは清水ファーム代表を務める夫の章広さん(50)と農業に従事する傍ら、「野菜によく合う」というコンセプトのもと、かつお節を使ったポン酢を開発。かつお節はさまざまな地域から取り寄せて吟味し、香り、味ともによかった静岡産を採用。印南産のシイタケや北海道産の昆布でも出汁を取り、梅酢や柑橘を混ぜてまろやかな味に仕上げた。さらにポン酢作りで使ったかつお節などを無駄なく利用しようと、食べる出汁も考案。ジュレ状で風味豊かな出汁の味が口に広がり、サラダや温野菜はもちろん、おにぎりの具やトーストにもよく合うという。地域資源活用推進委員会主催のかつお節削りイベントなどで試作品が出されて好評となったこともあり、本格的に商品化。容器のラベルは親戚のデザイナーに依頼した。

 2つの商品は、清水さんが長年の夢を叶えて昨年11月に印南小学校前でオープンしたカフェ&プランツ「つばめ」で販売。白浜町のとれとれ市場、田辺市内の雑貨屋でも取り扱っている。ポン酢は200㍉入り800円、食べる出汁は100㌘入り600円(いずれも税込み)。

 清水さんは「かつお節に関連する商品がなかったので、少しでも町のPRにつながればと思います」と話している。