日高地方出身で唯一のJリーガーとしてセレッソ大阪で16年、鹿児島ユナイテッドFCで3年、19年間プロの世界を走り抜けた御坊市出身の酒本憲幸選手(37)が、今季限りでの引退を表明した。筆者は酒本選手が初芝橋本高校時代からこれまで何度も取材させてもらった。高校3年の冬、卒業後にセレッソ大阪入りが決まった際も本紙新年号特集の取材で同高校グラウンドで話を聞かせてもらったのを昨日のことのように思い出す。写真撮影のためのリフティングやドリブルを照れながら何度も繰り返してくれたのが懐かしい。

 小学生時代所属した御坊キックマンの初蹴りに顔を出した際や、セレッソ大阪の練習場でも快く取材に応じてくれた、本当に感じのいい兄ちゃん。先月26日の鹿児島でのホーム最終戦後に引退セレモニーが行われ、後日、Zoomを使ってリモートで取材させてもらった。キックマン時代、梅本昌照監督から「サッカーを楽しめ」と教えられたことを最後まで自分の中で大事にしてきたという言葉が心に残った。鹿児島FCのユーチューブチャンネルで後輩選手が酒本選手から「サッカーを楽しめ」と教えてもらったと言っていたのを観て、成績より大事なものを残していったのだと感じた。

 酒本選手のご両親にもお世話になった。本紙協賛の新報杯少年サッカー大会にも「頑張った子どもたちにあげてください」と酒本選手のサイン色紙やタオルを差し入れていただいたこともある。このご両親にして、人に愛される選手が育まれたのだろう。これからもサッカーに携わっていきたいと言っていた酒本選手。これからまた「サッカーを楽しむ」選手たちが増えることを楽しみにしている。 

(片)