写真=財部の新施設前でVRのゴーグルを手に佐野さん

 障害のある就学児童が学校の授業終了後や長期休暇中に通える御坊市の放課後等デイサービス「らん」(村岡賢一管理者)が、県内で初めてVR(仮想現実)を使った療育を導入し、社会自立やより制約の少ない生活ができるようトレーニングを行っている。同施設は8日、湯川町小松原から財部に移転。7日まで内覧会を行っている。

 放課後等デイサービスは、小学1年から高校3年までの障害のある子どもたちが放課後や休日に通える療育、居場所機能を備えた福祉施設。基本的に自立支援や日常生活充実、創作の活動、地域交流の機会、余暇の提供を行っており、「障害児の学童保育」ともいわれている。

 株式会社松山(松山典樹代表)が運営する同施設は2016年3月開所。先月から発達障害の子ども向け療法として、障害者向けの就労支援ソーシャルスキルトレーニングでVRプログラムを導入している。

 同社営業本部本部長で同施設指導員の佐野将徳さん(38)によると、発達障害のある人は初めてのことが苦手な場合が多く、失敗を繰り返すことで自己肯定感が低下。社会への参加がさらに限定的になるため、VRで当事者や他者の目線から社会生活を予習することで、事実を適切に捉える力や他者の表情、言動から心情を推察する力、自身の考えを共有する力を、変化を評価しながら養っていく。

 VRプログラムはVRに慣れてもらう動画から、あいさつなど小学校低学年編、お金を貸してほしいと言われたときや不審者への対応の思春期編、面接など就活編、自己紹介やミスしたときの就労編、接客など職業体験編まで約100種類。さまざまな場面を繰り返し練習し、社会で必要なスキルを実践的に習得できる。

 このほど、財部に新しい施設が完成。従来の「学童保育型」から「成長療育型」にあらため、「習慣―定着―成長―自立」のタイムラインを掲げて療育を行っていく。

 新しい施設の内覧会は午前10時から午後4時まで。問い合わせは同施設℡0738(20)5343。