政府は30日夕の記者会見で、アフリカのナミビアから入国した男性が変異株「オミクロン株」に感染していたと発表した。

 いつしか新型コロナウイルスに関するニュースに慣れ、マスク生活が当たり前になり、はや2年が経とうとしている。思い返せば19年の年の瀬、中国武漢で原因不明の熱が流行しているというニュースを、対岸の火事だという気分で聞いていた。しかし、対岸の火事は瞬く間に日本だけでなく世界に飛び火。いつしか武漢という地名は忘れられ、オミクロン株という覚えにくい名前にまで進化してしまった。

 太平洋をはさんだ「対岸」のアメリカでは、大統領首席医療顧問のアンソニー・ファウチ氏(80)に対する批判が噴出している。ファウチ氏は84年11月に国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所所長に就任。現在も所長を務め、レーガン政権からバイデン政権まで、歴代6人の大統領に感染症に関する助言を行ってきた人物だ。

 同氏は5月議会の公聴会で「NIHはウィルスの機能獲得実験のために、武漢ウィルス研究所に資金を出したことはない」と述べたが、NIHは14年から19年まで「コウモリ・コロナウィルスの出現リスクに関する評価」というタイトルの助成金、総額310万ドルをニューヨークの非営利団体に提供。

 そのうち約60万ドルが武漢ウィルス研究所に流れており、疑惑が深まっている。昨年2月に同研究所は、「研究所にデータが残っていたコウモリから採取されたウイルスの遺伝子配列が、新型コロナと96%以上一致している」と公表している。パンデミック以前の同研究所は、人類の脅威となるウイルスに対抗するための国際協調の舞台だったのではないだろうか。  (也)