写真=阪本さんの作品「薄ら日興福寺の塔」

 

写真=鳥居さんの作品「草むらの花」

改組新第8回日本美術展覧会(日展)洋画部門で、日高地方から阪本由捷さん(82)=御坊市藤田町吉田=、鳥居佳子さん(73)=日高川町和佐=の2人が昨年に続き入選した。2人とも洋画白玄会会員で、ともに今回が4度目の入選。同部門には1604人が応募、県内からの同部門入選は4人だった。日展は今月29日から11月21日まで、東京都港区六本木の国立新美術館で開かれる。

阪本さんは全国的な美術団体「示現会」の正会員。地元では50年以上前から洋画白玄会会員として活動している。中学校で美術教諭として長年勤める傍ら制作に取り組んできた。

今回の入選作品は100号の大作で、タイトルは「薄ら日興福寺の塔」。公園になっている奈良県庁の屋上から、阿修羅像などで有名な興福寺の五重塔を眺めて描いた。昨年の秋から描き始め、今年9月の締め切り直前までおよそ1年かかって仕上げた。午後4時頃、少しずつ暗くなってくる時間帯の光の中でそびえ立つ五重塔をポイントに、寺の屋根、深い緑の木々などを描いている。「長年『塔』をテーマに取り組んでおり、地元の道成寺をはじめ京都の東寺の塔、八坂の塔なども描いてきました。天をまっすぐに指す姿に心ひかれます。今回は色彩をもっと強くしたかったのですが思ったよりも抑えた色調に仕上がり、入選は無理かもしれないと思っていたので知らせを受けて驚きました。こうなると意欲が湧き、もっと回を重ねられるよう頑張っていきたいと思います」と喜びを話している。

鳥居さんは元小学校教諭。13年前に三尾小を最後に退職した。30代の頃から洋画を始め、白玄会のほか関西水彩画会、研水会、一水会に所属している。

今回の入選作品は「草むらの花」と題する100号の大作。自宅近くにあるため池の堤防を下から見上げる構図で、上に空を配して野草の花々を精密に描いた。アザミ、タカサゴユリ、キンポウゲ、クズなどさまざまな植物があり、アザミの花は一様にピンクを使うのでなく濃淡をつけたりオレンジ色に近い色調にするなど変化を持たせた。「華やかな園芸種の花でなく、小さくても生命を感じさせてくれる野の花が昔から大好きで、生涯のテーマとして取り組んでいます。最近は北海道の雄大な自然の中の花が好きでよく出かけていたのですが、コロナ以降は行くことができず、地元の風景を選びました。1年以上かけ、締め切りぎりぎりまで描いていたのですが色などに不満が残り、入選できるとは思っていませんでした。昨年から連続で入選できて、とてもうれしいです」と喜んでいる。