写真=煮込んだフジのつるを木づちで叩く寒川さん㊧と友渕さん

 旧美山村に伝わり、約40年前に姿を消したフジのつるを材料に作られる「藤布」を復活させようと発足した「紀州藤布保存会」が10日、寒川にある茅葺きの寒川邸で活動を開始。フジのつるから繊維を取り出す工程に挑戦した。

 藤布は、フジのつるから繊維を取り出し、糸を紡いで織った布。日本最古の布の一つで、綿よりも古く、麻よりも丈夫だという。旧美山村で生産されていた歴史があり、茶がゆを炊くときの茶袋やせいろ蒸しするときの蒸し布など、日常のさまざまな用途で使われていた。生産はすでに途絶え、約40年前には姿を消してしまった。

 織物などを行う友渕定代さん(57)=日高川町三百瀬=が、藤布の存在を知り復活させようと、現在も藤布が作られている京都の丹後地方で1年間製糸方法を学び、藤布の紡織経験のある寒川歳子さん(81)=同町寒川=を会長に、紀州藤布保存会を発足した。

 この日は同保存会の初活動で、朝からフジのつるを3時間以上煮込み、軟らかくしてから木づちで叩き、余分な皮を分離させ、水で洗って繊維を取り出した。寒川さんが藤布作りをしたのは40年前で、その記憶をたどりながら、鍋から取り出すときの軟らかさや、木づちで叩く強さなど、試行錯誤しながら作業を行った。

 友渕さんは「丹後と美山では作業工程が異なるので、この地方の気候や材料に適した美山の技術を身につけ、少しでもここに伝わる製品に近づけ、後世に伝えたい」といい、寒川さんも「幻の布となった藤布に若い人が興味を持ち、知ってもらえるだけでもうれしい」と笑顔を見せていた。