写真=遺族を代表してあいさつする信濃さん

 2011年9月の台風12号による大雨で3人が犠牲となり、いまも1人が行方不明となっている日高川町の日高川交流センターで4日、災害から10年目の追悼式典が行われた。遺族と関係者合わせて約80人が出席。久留米啓史町長はあらためて災害に強いまちづくりに力を尽くすことを誓い、遺族らが祭壇に花を手向け、犠牲者の冥福を祈った。

 冒頭、「紀伊半島大水害犠牲者之霊」と書かれた祭壇の柱に向かって全員で黙とう。久留米町長は犠牲者を悼み、復旧・復興と災害に強いまちづくりに取り組んできた10年を振り返ったうえ、「大水害の記憶を後世に伝承していくとともに、このような悲しい出来事が再び起こらないよう力を合わせ、今後とも災害に強い日高川町を築いていくことを固く誓います」と述べた。

 山本啓司町議会議長、冨安民浩県議会議員、中村一人日高振興局長の追悼の言葉に続き、遺族を代表し、父を亡くした信濃大典さん(54)があいさつ。「大水害後しばらくは、負の感情が交錯しましたが、時間が経つにつれ、うじうじすることが嫌いだった父を思い出し、周りの人の支援や復興への取り組みをみるうちに、そういった感情が消え、前を向くことができました」とし、「起きてしまったことは変えられませんが、そこから何を学ぶかが大事。河川整備も進み、ダムの事前放流ができるようになり、大洪水に耐えられる地域になってきています。これからは、私と同じような思いをする方がないように、微力ながら防災活動に取り組んでいきたいと思います」と話した。

 読経のなか、犠牲者の遺影が飾られた献花台に遺族ら出席者が順に花を手向け、静かに手を合わせた。