写真=特色ある授業展開に取り組む南部高校

 南部高校は2023年度から、生徒が企業や事業所で年間を通じて働く「デュアルシステム」を導入する。週1回の年間25日程度、実際の職場で大人と一緒に働くことで、仕事の喜びや厳しさを理解し、社会人としてのマナーやコミュニケーション能力を身につける県内初の試み。2年生普通科の「デュアル実習」選択生を対象に行うことにしており、将来の地域社会の担い手育成という特色ある授業として注目されそう。

 デュアルシステムとは学校での勉強と企業や事業所での学びを並行して行うこと。全国的に取り入れている学校が増えている。高校を卒業して就職しても、「思っていた仕事と違った」などとすぐに離職してしまうケースがあることから、社会人になるための準備に力を入れようと導入を決めた。

 南高版デュアルシステムは「1つの職場に1人の生徒」を基本とし、大人たちの中に1人で入ってもらう。短期間ではなく1年間継続することで、働くことの楽しさや厳しさをより深く知り、人間関係や協調性、コミュニケーション能力など働くためのスキルを身につけてもらうのが狙いだ。

 来年度入学の1年生にデュアル実習の概要を説明し、7年ほど前からなくなっていたインターンシップ(2日間の就労体験)も復活させる。9月ごろに参加希望調査を実施。10月には保護者への説明も行う。実際にスタートするのは2年生になってからで、普通科の中でデュアル実習を選択した生徒約20人を対象とし、4月に開講式を行う。

 生徒は毎週木曜、実習先の企業や事業所に直接出社し、休憩を除き6時間働く。夏休みなどの長期休暇、定期考査、学校行事などの期間は除くため、年間実習は25回程度を想定している。授業として行うため報酬はない。担当教諭が実習日に毎回、実習先を訪問して様子を確認。実習翌日には振り返りの授業も行う。

 現在、担当教諭らが準備を進めており、みなべ町のほか御坊市など日高地方、田辺市の企業や事業所を訪問して内容を説明し、協力を要請中。すでに製造業や美容室、飲食店などさまざまな職種の事業所から協力を得ているという。最終的には30カ所の実習先確保を目指す。

 担当の種治宏樹教諭は「生徒たちには自分への自信、働くための意欲と態度を身につけてもらい、南部高校に来れば働くための勉強ができると思われるようにしていきたい。取り組みに関心のある事業所があれば、ぜひ声をかけてください」と話している。