子どものころ、学校から帰って友達と遊んだあと、夕飯を食べながらテレビの再放送アニメを見るのが楽しみだった。「侍ジャイアンツ」を夢中になって見ていると、突然、父に黙ってチャンネルを変えられた。

 相撲が大好きな父にとって、アニメが放送される夕方5時から6時までは幕内後半、最も土俵から目が離せない時間帯。番場蛮の魔球にくぎ付けのわが子の興奮を知るや知らずや、無情にも画面は北の湖と朝潮の対決に切り替わった。

 そんな自分も、いつのまにか父以上の相撲好きとなった。子どものころは退屈で仕方なかった4分間の仕切りも、いまは録画しておけばリモコンで飛ばすこともでき、場所中は初日から千秋楽まで毎晩、幕内の全取組をチェックしている。

 この名古屋場所は予想通り、横綱白鵬と大関照ノ富士がマッチレースを展開。大関の朝乃山は謹慎、貴景勝は負傷で途中休場となり、もう1人の大関正代は勝ち越しさえ厳しい状態で、日本人力士はモンゴルの2人にまったく歯が立たない。

 圧倒的な優勢を保つモンゴル勢に対し、今後が楽しみな日本人力士としては、今場所は上位にはね返された若隆景を筆頭に、明生、隆の勝、大栄翔らが挙げられるが、ファンとして悔やみきれないのは朝乃山である。

 先場所は初日かららしくない浮ついた取組が続き、何か悩みごとでもあるのかと思った矢先、週刊誌に不祥事を暴かれた。6場所(1年間)の出場停止で来年の夏場所まで復帰できず、5年前の初土俵で立った三段目からの再起となる。

 その日まで精進を重ね、天国の近大相撲部の恩師伊東監督と偉大な先輩、後輩、さらにふるさと富山、日本中の相撲ファンのために必ず復活を。(静)