静岡県熱海市伊豆山で起きた大規模な土石流災害は13日現在、10人の死亡が確認され、依然17人の行方が分かっておらず、一日も早く見つかることを切に願う。

 今回の災害は大雨によるものだが、天災というより、人災との見方が強い。原因は土砂を人工的に固めた盛り土とされる。現場はもともと谷だったが、盛り土で埋め立てられた。専門家によると、本来、谷は周囲から水が集まる形になっており、盛り土の造成が行われたからといってその水が集まって来る仕組みは変わらない。つまり、水を多く含めば地盤が弱くなり、もとの谷と盛り土の境界が滑って崩落し、土石流になる恐れがある。

 盛り土をする場合は雨水や地下水の排出対策が欠かせないが、熱海市での開発時にはきちんとできていたのか、行政のチェック体制は機能していたのか。詳しくは今後検証されていくことだと思うが、地元住民からは以前から、危険性を指摘する声もあった。開発工事の途中で、大雨で土砂が何度も流れてきたことがあったという。このときにもっと適切な対応を取ってくれていればと、思わずにはいられない。

 盛り土による災害は全国で過去にも発生している。同じことを繰り返しているのは非常に残念だが、やはりいまからでも、あらためて教訓にしていかなければならない。今回の被害を受けて和歌山県では県内の盛り土の総点検をスタートさせた。ただ、国や各市町村の協力も得るが、行政の力だけで危険個所を全て把握するのは難しい。いまこそ県民が以前から不安や危険に思っていた盛り土について声を上げるべき時。現地で暮らす住民が一番よく知っている。(吉)