県林業試験場の2020年度研究成果発表会が10日、上富田文化会館で開かれ、主任研究員の法眼(ほうげん)利幸さんが美浜町の煙樹ケ浜松林のマツ類枯死の増加要因について、18年9月の台風21号の潮風害が強く影響しているとの調査結果を報告した。

 煙樹ケ浜の松林はマツ材線虫病(松くい虫)の被害を受け続けており、薬剤散布等の対策で年間の枯死本数を500本程度に抑えてきたが、18年には約1500本、19年は約1200本とマツ類の枯死本数が急増。その要因を、林業試験場の法眼さんを中心に和歌山高専、美浜町、日高振興局が共同で調査した。

 19年4~8月に枯死したマツ類90本(クロマツ39本、アカマツ43本、テーダマツ8本)の原因を調べると、潮風害の影響が68%と最も高く、マツ材線虫病が14%、周囲木からの被圧4%、不明13%だった。

 法眼さんによると、海岸に面した林で、潮風害に強いとされるクロマツの枯死が発生。この原因は、周囲の木が茂り、栄養や日照が不足する被圧が起こり、弱った状態で激しい潮風を浴びたため、少ない葉を失って枯れたと推察。クロマツよりも風潮害に弱いとされるアカマツは、海岸からの距離にかかわらず、周囲木の影響がない木も多く枯れていた。18年以降のマツ類枯死の増加は、同年の台風21号が強く影響していると考えられ、通常は台風で潮を浴びても同時に雨で洗い流されるが、21号はまれにみる風台風で被害が大きくなったという。

 症状の進展が早いマツ材線虫病と異なり、潮風害で極度に衰弱すると緩やかに枯れていくため、「現在弱った木も多く、枯死本数が元の水準に戻るまでには時間がかかる。過密になったクロマツ林は、海岸近くから優先的に除間伐を実施することが望ましい」と話していた。