写真=藤原さんの俳句と随筆集

 印南町出身、神戸市在住の医師藤原大美(ひろみ)さん(75)が、俳句と随筆集「我が俳句とその背景の雑記帳」を自費出版した。

 藤原さんは日高高校から大阪大学医学部に進学。1969年に卒業、大阪大学病院等での研修、アメリカ国立がん研究所への留学等を経て、現在は医療法人大織会大織診療所院長、同会理事長を務める。

 俳句は8年前、妹の笹野紀美さん(印南町)に勧められて始めた。奈良県の俳句結社「南柯(なんか)」に所属し、毎月5句ずつ投句。8年間で500句となった。これまでに医学書や健康書を出版しており、今回は自作の俳句とその背景を書くことで「自分史」的な一冊に、と執筆。261句を選び、「故郷」「人生」「家族」「花鳥風月」「四季の食べ物」等の章に分けて掲載。1㌻を上下に分割し、上段に俳句、下段にその句にまつわる文を書くというユニークな構成で、藤原さんの故郷や家族への思いが豊かにつづられている。

 故郷の章では、「春の田に映りし山を雲過(よぎ)る」の句に添えて家の稲作を手伝った中学生時代の思い出を書き、「当時のテレビは小型で画面も小さかった。水をたたえた水田は超大型の巨大ハイビジョン画面のようなもので、そこには迫力のある山が映った」と振り返る。母が植えたコブシの花に寄せた「故郷に帰れと母のこぶし咲く」などもあり、「人生」の章では「大寒や温めて当てる聴診器」など医師の仕事を詠んでいる。家族では母、妻、子ども、孫らへの思いをそれぞれに「菜園に蕪と遺れり母の鍬」「向日葵や妻は家族の輪に咲けり」「よちよちと歩き初む子や山笑ふ」など句に託している。

 表紙には、絵を趣味とする妻の洋子さんが描いたメジロとキキョウの花を使っている。あとがきで藤原さんは「医学という自然科学系のみの中で生きて来た私の人生に、俳句はそれまで欠けていた風流な側面を吹き込んでくれることになった。文を書くことの意義は自分がこの世に生きた証を残せることである」とつづっている。

 販売はしておらず、問い合わせは妹の笹野紀美さん℡090―5890―3437。