有事の際、最も危険で困難な任務を与えられる陸上自衛隊の精鋭部隊「レンジャー」の訓練が兵庫県の伊丹駐屯地で行われ、美浜町の第304水際障害中隊・和歌山駐屯地の横内力也3等陸曹(22)=岸和田市出身=が訓練を修了。9日、同駐屯地に帰還し、3カ月の想像を絶する訓練を耐え抜いた横内3等陸曹を約100人の隊員が出迎えた。

 レンジャーは、食糧補給が困難な戦場で敵陣深く侵入し、通信施設や弾薬庫など重要施設の攻略を任務とする少数精鋭部隊。自衛隊の中で最も過酷な訓練を完遂した隊員のみがその資格を有し、ダイヤモンドをかたどったレンジャーバッジをつけることが許される。

 伊丹駐屯地での訓練は9月11日から始まり身体能力など素養試験に合格した屈強な隊員30人でスタート。1カ月は水泳やロープ訓練、ヘリコプターからの降下など任務に必要な体力、行動をたたき込み、後半は食糧、物資の補給のない戦場を想定し六甲山に入り9つの任務を遂行する。1任務中は70~80時間で、40~60㌔の荷物を背負い、道のない山中を動き回る。1つの食糧を全員で分け合うなどほとんど飲まず食わずで、睡眠もとらず極限まで追い込まれる。半数の14人が脱落し、訓練を修了できたのは横内3等陸曹を含め16人だった。

 地獄のような訓練を終え、3カ月ぶりに駐屯地に戻った横内隊員を待ち受けていたのは、仲間の生還を祝うクラッカー。帰還式で石黒中隊長は「和歌山駐屯地の誇り、レンジャー隊員として中隊をしっかりけん引していってほしい」と言葉を贈った。横内3等陸曹は「訓練を終えることができたのは、部隊の皆さんの激励のおかげ。レンジャーの先輩池崇志2曹の『己の弱さ、水の大切さ、山への感謝』という言葉が身に染み、自分の弱さを痛感した」と話していた。今後については、「レンジャーの先輩たちに憧れて訓練に臨み、達成できたが、ここがゴールではなくスタート。より精強な隊員になるよう頑張ります」と決意を新たにしていた。

 陸上自衛隊で最も小さな和歌山駐屯地。レンジャー有資格隊員は横内3等陸曹で9人となった。

写真=和歌山駐屯地のレンジャー隊員と肩を並べる横内3等陸曹(中央)