改組新第7回日本美術展覧会(日展)洋画部門で、日高地方から阪本由捷さん(81)=御坊市藤田町吉田=、鳥居佳子さん(72)=日高川町和佐=の2人が入選した。2人とも洋画白玄会会員で、いずれもこれが3度目の入選となる。同部門には1663人の応募があり、県内からの同部門入選は4人だった。日展は今月30日から11月22日まで、東京都港区六本木の国立新美術館で開かれる。

 阪本さんは全国的な美術団体「示現会」の正会員。地元では50年以上前から洋画白玄会会員として活動している。中学校で美術教諭として長年勤める傍ら制作に取り組んできた。日展では2012年度に「揺光」で初入選を果たし、4年前に2回目。13年度御坊市文化賞を受賞した。

 今回の入選作品は100号の大作で、タイトルは「東寺の塔」。京都のシンボルともなっている国宝の五重塔を、ホテルの窓から眺めて描いた。前回の入選作も同じく東寺の塔で夕方の光の中の眺めを描いたが、今回は朝の風景。家々の屋根を手前に、淡い紫色の山並みをバックにして、五重塔が朝の光に浮かび上がる様子を描いた。「寺院や神社は好きでよく描いていますが、特に塔は美しい形に心ひかれます。昨年9月から取りかかり、締め切り直前まで描いていました。家々の屋根を影の中にあるように暗く、背景の山並みを青くなりすぎないようにするなど、塔が明るく浮かび上がって見えるように気を付けて描きました。『塔』はこれからも取り組みたい大きなテーマなので、4年ぶりに入選に選んでもらえてとてもうれしく思います」。

 鳥居さんは元小学校教諭。12年前に三尾小を最後に退職した。30代の頃から洋画を始め、透明水彩絵の具を使って野の花を主なテーマに制作を続けている。関西水彩画会、研水会、一水会に所属し、日展には2015年、17年に入選。

 今回の入選作品は「草むらの花」と題する100号の大作。北海道・石狩浜の道を中心に、野生の花々を繊細に描いた。これまでは大きな画面いっぱいに草の葉や花が広がる構図を手掛けてきたが、今回は道を大きく取り入れた初めての構図に挑戦。舗装されていない浜辺の道で、砂の質感を表すために挽いたあとのコーヒーを絵の具に混ぜるなど工夫した。北海道特有のハマナスなどピンク、赤、黄色の花が緑の中に美しく描かれている。「昔からお花が大好きです。特に園芸種ではなく、小さく地味でも命を感じられる野の花にとてもひかれ、生涯のテーマにしたいと思っています。今回は初めて取り組んだ構図で自信はまったくなく、発表の日もあえて考えないよう散歩などしていました。発表を見て、飛び上がりたいほどうれしかったです」と喜びを話している。