吃音を持つ非常勤講師の村内先生と、様々な傷を抱えた中学生達との交流を描く短編集。村内先生の言葉が中学生の繊細な心のすき間に寄り添い、埋めていきます。重松作品は多数映像化されていますが、こちらの作品も2008年に阿部寛主演で映画化されています。本のタイトル、映画化の元にもなっている、《青い鳥》というお話を少しご紹介。

 物語 村内先生が赴任してくる前の1学期。野口は何でも言うことを聞いてくれる便利な奴として「コンビニくん」とあだ名をつけられ、クラスのみんなにいじめられていた。2学期に入って、野口はいじめに耐えきれず自殺未遂を起こし、転校してしまう。それから学校はいじめの過去を消そうかとするように平常に戻る。野口と仲良くしていた園部は、自分はいじめに加担していないと思いたかったものの、後悔が残っていた。そんななか村内先生が赴任してきた。先生は突然机と椅子を運んできて、「野口君、おかえり」と誰もいない席に声をかけ始める。園部はなぜそんなことをするのか村内先生に問うと、「これは野口にとっては一生忘れられない出来事なんだ。それを皆が忘れることはひきょうだろう? 野口にしたことを皆は忘れてはいけない、これは責任なんだ―」。その言葉が園部の心に突き刺さり、先生の前で大泣きしてしまうのであった。

 村内先生は上手く話せないから、本当に〝たいせつ〟なことしか言いません。だからこそ、その言葉が生徒達の心を揺り動かします。生徒の心情の細かな描写などはさすが重松ワールド、引き込まれます。実は彼も吃音を持っていて、村内先生に自分なりのヒーロー像を投影したのだとあとがきで紹介されています。重松作品は多数もっていますが、なかでも大好きな作品です。