代表作の「青の炎」や「悪の教典」で今や誰もが知っている人気のホラー作家貴志祐介。デビューから1年目の作品「黒い家」を紹介します。

 物語 主人公は、保険会社に勤める慎二。そこである男から1本の電話が入る。その男は以前から自傷により、保険金の支払いを要求するクレーマーで、保険会社からマークされている人物だった。慎二は言われた通り男の家に行くと、男の息子の首つり死体を目撃してしまう。慎二はまさか自分の息子を手にかけたのではと疑い、男の妻幸子に注意を促す手紙を送ってしまう。それからというもの、幸子が慎二の前に頻繁に現れるようになり、異常を感じた慎二は幸子が主犯格ではないかと疑い始める。息子が死んだのに保険金が下りないことに業を煮やした幸子は、慎二や慎二の彼女、周りの人たちに敵意を向けはじめ、平穏な日常が恐怖に染められていく。警察が自殺と判断し、狂人夫婦に保険金が支払われることになり、やっと解放されると思った慎二だったが、今度は「夫が勤務中の事故で両腕を切断したから損害保険を支払え」という電話が入る…。

 20年以上も前の作品ですが、初めて読んだとき、タイトルからしてお化け系と思い、ワクワクした当時小学生だった私は、人間の怖さに何とも言えない恐怖を感じました。幸子が和歌山出身の設定で関西弁ということもあり、生々しく読みやすい作品だと思います。

 この作品は映画化もされており、大竹しのぶが見事な狂気ぶりを演じています。今でこそサイコパスという言葉が定着していますが、この作品が先駆けなのではないでしょうか。実際にあった事件の話を基にフィクションで描かれていると後で知った時、私はお金に困っても絶対にしないでおこうと心に誓いました。