日高川町で近く、若手の農家グループと吉本興業㈱がスクラムを組み、農地保全に取り組みながら農業移住希望者の獲得を目指す「耕作OK地プロジェクト」が始動する。中心になるのは、吉本興業和歌山県住みます芸人でお笑いコンビの「わんだーらんど」の2人。テレビやラジオに出演するタレントの発信力をフルに生かし、耕作放棄地の増加という地域の社会問題解決にトライする。

 「年々、耕作継続が懸念される優良農地が増加傾向にある。若い農業者といえども面積拡大は限界…」。町内でミカンや梅、イチゴなどを生産する30~50代まで12人のグループ、日高川町「若い農業者部会」(藏光俊輔部会長)が悩みを抱えていたところ、同社が全国で展開する、芸人らがビジネスプランを考案して収益を上げながら社会問題の解決を図る事業「ユヌスプロジェクト」と意図がマッチ。新しい取り組みの実施が決まった。

 わんだーらんどは、日高川町の観光情報の発信役を務める観光PR人「日高川超~さけび隊」を務めており、町内にも詳しい。美浜町出身のまことフィッシングさん(34)と、紀美野町出身のたにさかさん(34)のコンビで、具体的には若い農業者部会や町地域おこし協力隊、JA紀州青年部にもサポートを受けながら耕作放棄地になりそうな園地を引き継ぎ、果樹を栽培。収穫物は自分たちで販売、自らの収入とし、園地の世話や維持にかかる費用もその収益で賄う。果樹栽培の様子はSNSやライブのタレント活動などを通じて発信。農業の魅力を広くアピールし、町外から新規就農者を呼び込む。園地ではファンと収穫体験を行ったり、ライブ会場で収穫物を販売したりとのアイデアも持っており、町のPRにも貢献する。

 わんだーらんどの2人は今年1月から果樹栽培の研修を受けており、農作業への対応もばっちり。事業が正式に始まると、週1回程度のペースで園地にやってくるという。藏光部会長は「自分たちで新規就農者を探してもなかなか来てくれない。このプロジェクトがうまくいってほしい」と期待を込め、わんだーらんどの2人は「一生懸命に農地をキープして、何とか早く引き継いでくれる人が見つかるように頑張りたい。実際にやってきて感じた農業の楽しさを発信し、農業をやってみたいという人に届けたい。耕作放棄地は全国どこでも抱えている問題だと思うので、これがモデルケースになれば」と意欲を見せていた。

 第1弾の園地は、耕作放棄地になる可能性があった和佐地内の30㌃のハッサク畑。今月中に藏光部会長と所有者の間で賃貸借契約を結び、取り組みをスタートさせる。このハッサク畑を引き継ぐ人が見つかれば、また新たな農地を探し、プロジェクトは継続される。

写真=和佐のハッサク畑で藏光さん(左から3人目)とわんだーらんど(同4、5人目)ら