先日テレビで、平成に一番売れたノンフィクションの本は養老孟司著「バカの壁」だと紹介されていました。それはまだ読んでいませんが、以前に読んだ、生物学者「福岡ハカセ」こと福岡伸一氏と養老氏の対談が面白かったので紹介します。

 内容 フランス文学者で武道家の内田樹、芥川賞作家の川上弘美と朝吹真理子、医学博士で解剖学者の養老孟司という4氏が、「生命」という大きなテーマで著者と対談。個性的な人物同士、話は自由自在、縦横無尽に広がっていく。

 養老氏との対談は養老氏ご自慢の「養老昆虫館」で行われ、元昆虫少年の2人は標本を見たり電子顕微鏡をのぞいたりと大はしゃぎ。「アリそっくりに擬態してアリの巣に潜り込む、おかしなカミキリムシがいる」「コノハチョウやコノハムシなんて虫食い跡まで再現して葉っぱに似せているね」「しかもその虫食い跡が個体によって違う」「やりすぎだよ」(笑)など話も弾む。

 次第に話は、生き物によって世界の見え方がまったく違うという話題から人間の意識のあり方、現代日本が陥っている「硬直した情報化社会」へと発展。

「学校というのは情報化したものを扱う場所になって、『情報処理作業』ばかりをさせています。昔の学校は作文を書かせて『情報化作業』を教えていた。今はその作文をあまりやらせないから、インターネットのつまみ食いになる」など、養老氏からの鋭い指摘も。

 湯川秀樹の「旅人」など、理系の人たちはしばしば詩情豊かな名著を著しますが、この対談にも美しい世界観とロマンを感じます。
 現在、養老氏は81歳、福岡ハカセは59歳ですが、2人とも少年の心で世界と向き合っているようです。
 他の3人との対談もそれぞれに興味深く、理系が苦手な人にこそお勧めです。