いよいよ4月1日、「平成」に代わる新しい元号が発表されます。本書は元号・皇室研究の第一人者、京産大名誉教授の所功先生が久禮旦雄同大准教授らとともに、元号と日本の歴史のかかわり、元号決定の仕組みを解説しています。

 元号が中国から日本に伝わったのは大和時代(およそ6世紀まで)。譲位による改元は1817年(文化14年)の光格天皇以来、約200年ぶり、明治以降では初めてです。

 昭和8年12月23日生まれの今上陛下は55歳で即位され、ひたすら世の中の安寧、国民の幸福を祈り続けてこられましたが、平成15年に前立腺がんの手術をされたころから将来を懸念され、22年7月(76歳)の宮内庁参与会議で譲位の決意を表明されました。しかし、さまざまな事情で先送りされ、28年8月、82歳になられて自ら「象徴としての務め」に関するおことばの中でご意向を示唆されました。国民は理解と共感を示し、政府も国会も議論を進め、天皇の退位に関する皇室典範特例法が衆参出席議員の全員賛成によって成立しました。

 終戦から5年、新憲法施行から3年後の昭和25年、参議院で一世一元が妥当なのか、講和会議を機に日本が国際社会に復帰するためにも、文明国共通の西暦に従ってはどうかという議論が起こりました。委員会参考人の過半数が元号廃止に賛成するなか、坂本太郎東大教授は「元号は独立国の象徴」、吉村正早稲田大教授は「元号は便利で国民の大部分が親しみを持ち、なによりいまは国民が民族の再建ということを自覚して立たなければならない」として元号廃止に反対したそうです。

 元号は廃止寸前のところで危うく存続しましたが、この言葉、改元を前にした日本人の私には強く胸に響きます。人生二度目の時代の節目、喜んでばかりもいられません。