由良町観光協会(丸宮信幸会長)は、今シーズンから協会加盟の旅館、民宿などで近畿大学が養殖するクエの料理を提供するよう進めている。同大学が戸津井沖でクエの養殖をしている縁で、従来の天然ものとの2本立てで売り込んでいく作戦。25日には関係者向けの養殖クエ試食会も開き、新鮮なぷりぷりの身にほどよく乗った脂のうまみが好評となった。 

 白浜町の近大水産研究所はクエのふ化から成魚までの完全養殖に成功し、2007年から本格的に出荷。白浜のホテルや旅館などで提供され人気となっているが、供給量が足らなくなってきたため、以前、地元漁師がマダイの養殖を行っていた戸津井漁港沖を利用することになり、15年6月からいけすを設けてクエの養殖をスタート。水が美しく、潮の流れもある環境が養殖に適しており、順調に出荷している。

 由良町観光協会では、天然クエの水揚げが減少傾向となる中、安定的に出荷され、価格が比較的安く、養殖技術の向上で味もよい養殖クエを、町内の旅館、民宿などで提供してはどうかと考えた。近大の養殖クエは「近大クエ」の登録商標を取得しているため、ことし8月、近大関連会社の㈱アーマリン近大と登録商標使用に関する覚書を締結。これで町内の旅館や民宿で提供する場合に近大クエのブランド名が使えるようになった。

 初の試食会は吹井の平佐館で行われ、協会員や役場職員ら16人が参加。重さ2㌔余りのクエを数匹使って鍋やお造り、から揚げ、胃袋の梅肉あえなど、フルコースのメニューを味わい、しめはクエのだしがたっぷり染み込んだ雑炊に舌鼓を打った。参加者は「戸津井漁港から直送し、新鮮なので身がぷりぷり。お造りは天然ものと区別がつけにくい」「鍋にすると脂の甘みが増しておいしい」などと高評価。丸宮会長は「由良町で育った近大クエが由良町で食べられるようになります。天然ものとの差別化を図った価格設定も早急に行って旅館や民宿などで頑張って売り込んでほしい」と話していた。