県が来月から日高、由良、広川の3町を対象エリアに、県内で初めて「GPS首輪」を活用したニホンザルの行動域調査を実施する。捕獲したサルにGPS首輪を装着して再び山に放った上で位置情報を把握し、捕獲檻などを効率的に設置できるようにするのが目的。日高地方では鳥獣被害の中でサルが最も深刻となっており、ICT(情報通信技術)を使った新たな対策として注目される。
 計画によると、サル被害が深刻な3町のエリアでモデル的に実施。GPS(全地球測位システム)の機能が付いた首輪とアンテナ、タブレットPCがセットになっており、首輪をはめられたサルがどのように移動するのかが、タブレットの地図上で確認できるシステムとなっている。費用は首輪15万円、アンテナ13万円、ダブレットPC12万円。首輪は、来月中にも日高と由良の両町内で仕掛けた箱わななどで捕獲したサルに装着。サルは群れで行動するが、オスは、はぐれる恐れがあるため、メスザルに首輪を着けて、群れ全体の行動を把握する。調査は3つの群れを対象に行う予定で、それぞれの群れのメスザル1匹ずつに首輪を装着する。行動域の調査は8月から来年2月まで。さらにことし10月から来年2月まで、GPSのデータを基に群れの行動を予測し、見通しのよい場所で目視による個体数も調査する。これらの調査は、日高振興局職員や関係町の職員が協力して行う。県は同じ調査を別の群れを対象に専門業者にも委託して実施する。調査終了後、首輪は遠隔操作で外すことが可能。非火薬方式を採用している。
 新事業の詳細は、11日に日高郡町村会応接室で開かれた日高地域鳥獣被害対策本部会議の中で説明があった。前年度の日高地方鳥獣害被害についても報告があり、農作物被害総額は4633万4000円。前年度に比べ185万3000円(3・8%)の減少となっているが、まだ深刻な状況。特にサルの被害額は1724万6000円で全体の35・8%を占めており、最も多い。日高振興局農林水産部では「GPSの測位回数は一日8回で、1年の調査で3000箇所の位置情報が把握できる。これを使ってわなを仕掛けて効率的に捕獲し、農作物被害の軽減に努めたい。うまくいけば他の地域でも活用したい」と話している。