由良町吹井、畑山造船㈱(畑山彰夫代表取締役)が建造していた、最新鋭のハーバータグボート「たか丸」が完成した。船舶や水上構造物を押したり引いたりするための船で、最高クラスの装備を整えており、海上労働条約適用船としては国内3隻目、近畿運輸局管内初。すでに航行テストなどもパスしており、小さなまちの造船所が、世界に通用する技術の高さを見せつけた。
 正式には曳船(ひきふね)兼第3・第4種消防船の種類で、航行区域は「限定近海区域A2水域」。全長38㍍、幅9・6㍍、深さ4・5㍍、喫水3・5㍍、総㌧数284㌧。主エンジンは2200馬力を2基搭載の4400馬力(ヤンマー6EY26W)。推進機は、全旋回式ダクト付き4翼スキュ固定ピッチプロペラが2セット(川崎レックスKST―180ZFIAI)。速力15ノット。けん引する能力(曳航力)は、最大67㌧でトップクラス。船首にはトーイングウインチ2基、船尾には太さ52㍉、長さ600㍍のワイヤートーイングウインチを据えている。60㌧フックとクレーンも1基ずつある。消防用の放水銃は、22㍍の高さまで伸縮可能。もしもの場合の海上火災には水と粉末剤、両方の消火活動ができる。
 定員は乗組員7、旅客12の計19人。近海区域で活動する総㌧数200㌧以上の船は、2014年度に改正された海上労働条約に基づき、船員室は全て上甲板上に設置し、床面積7・5平方㍍以上、天井の高さ2・05㍍以上の個室とするなど、船員の労働環境に配慮した構造とすることが決まっている。ただ、タグボートとして小回りの利く船の規模に抑えながら、船員の個室や各種装備を整えるのには、高い造船技術が必要。たか丸はこれら全ての基準をクリアし、船員の個室には洗面所、エアコンもある。このほか、航海計器類も充実している。
 畑山代表取締役は「建造は昨年8月からスタート。海上労働条約の適用船を造るのは初めてで、運輸局の検査員と協議しながらいい方法を考えてきた。従業員も苦労しながら無事完成することができた」と話している。たか丸は今月25日、発注を受けた三洋海事㈱(本社=大阪市)に引き渡す。