日高川町の地域おこし協力隊の村越拓也さん(28)=日高川町小熊=は、来年3月の任期終了後、ジビエの捕獲、加工、販売の起業を目指している。協力隊で培った狩猟や解体の技術を生かし、鳥獣駆除で地域に貢献できる事業として考案。福祉の仕事をしていた経験もあり、「ジビエで地域活性化につなげるとともに、障害のある人に仕事を提供できれば」と話している。
 村越さんは静岡県出身で、中学時代に聴覚障害者の集まりに参加した際、手話が使えないことから孤立感を感じ、「障害者も普段は同じ思いをしているのでは」と福祉に興味を持った。高校、大学と福祉の学校に進み、卒業後は県内の障害者施設に勤務。日高川町出身の女性との結婚を機に、新たなことに挑戦しようと協力隊に応募し、2015年4月から勤務を始めた。
 協力隊として寒川地区に常駐し、原木シイタケの生産販売やホタルの復活に向けた竹キャンドルイベントなどに協力。地域の課題を知る中で鳥獣被害に興味を持ち、16年に銃とわなの資格を取得。以降、仕事の一環で被害のある農地へわなを設置するなど活動。1年目はシカなど数匹程度だったが、ことしは4月以降でシカ15~20匹を捕獲した。
 解体の技術も学び、猪谷にある町の鳥獣食肉処理加工施設を活用して、スライスやミンチに加工。知り合いを中心に、インターネットサイト「村越の村おこし」でも販売し、利益は寒川の地域活性化団体寄り合い会で活用している。また、日高高校中津分校の生徒と一緒になって飲食店でのジビエ料理の提供も行った。
 協力隊は来年3月で任期終了。その後も日高川町に残ることを決め、新たな仕事を模索するなか、地域の課題をビジネスにして地域おこしにつなげようと事業を考案。具体的には美山地域に仕掛けているわなを町内全域に増やし、捕獲した肉を販売。当面はすべてを1人で行うが、軌道に乗れば猟師からシカなどの買い取りも計画。臭みの強い肉はドッグフードなどにするほか、角や骨、皮の加工など、ジビエ以外にも広げていく。
 「まずは売ることが大切なので、ネットのほか各地の知り合いに声をかけて売り場所の確保に努めたい。『おいしい、ヘルシー、村おこし』を合言葉に、地域の人も肉を食べた人もみんなが笑顔になる事業にしたい」と意欲。地域福祉向上への思いも強く持っており、「障害者の方に仕事を提供し、一緒になって村おこしをしていけるようになれば」と目標を掲げている。