由良町門前、臨済宗鷲峰山興国寺(山川宗玄住職)で15日、開山以来700年以上続く盂蘭盆会の精霊送りの伝統行事「火祭り」が行われ、多くの檀家や見物人らでにぎわった。若衆が特大たいまつを担ぐ「土俑(どよう)担ぎ」では、時折降った小雨を吸ってたいまつが一層重くなり、悪戦苦闘する姿も見られたが、勇壮な姿に見物人から大きな声援と拍手が送られていた。
 午後9時から法要を行ったあと、10時ごろから同寺東の無常堂に移動。地元小学生の「たいまつ踊り」では、たいまつをくるくる回転させながら軽快に踊った。土俑担ぎでは、若衆4人がそれぞれ両端に火のついた長さ4㍍、重さ150㌔ほどもある大たいまつを担いで釜場を3周。周囲に火の粉が舞い散る中、重さや熱さに耐えながら踏ん張る勇姿に、見物人から「頑張れー」「あと少し」などの声援が飛び、回り終わると大拍手。中には力尽きて途中で大たいまつを落とす人もいたが、助っ人で別の若衆が担いで豪快に釜場を回り、盛り上げていた。少し降った雨は、行事に影響を与えるほどではなかったが、大たいまつに雨が浸み込み、余計に重くなっていた。特大たいまつを同時に4本立てる「線香立て」、2本ずつ向かい合わせる「拝み合わせ」、投げて転がす「俵返し」も行い、釜場で特大たいまつ4本を井桁に組んだ。
 クライマックスは県指定無形民俗文化財の「灯籠焼き」。まず同寺の大灯籠が釜場に投入され、続いて檀家の切り子灯籠も次々と放り込まれると、釜場の炎は高さ10㍍ほどにまで一気に高く、強く燃え上がった。幽玄の世界で六斎念仏と尺八の音色が響く中、檀家らは先祖の霊との別れとともに過ぎ行く夏を惜しんでいた。会場にはアマチュアカメラマンも多数詰め掛け、シャッターチャンスを狙っていた。