ことしは終戦から72年になる。本紙では毎年8月に戦争体験者の声を紹介する企画「終わらざる夏」を連載しているが、ことしも5日付から始まった。戦後72年となると元気に話せる体験者の方も少なくなってきており、出てもらえる人を探すのに苦労する。また筆者が連載に加わって5年になり、ことしも入れて合計12人の方を取材してきたが、その中で亡くなった方も出てきている。生前に貴重な声を紙面に載せることができたことはよかったが、戦争を知る人が減るのは残念に思う。
 ことしもまた2人の方を取材した。1人目の方は小学生時代に和歌山市で和歌山大空襲を体験。艦載機グラマンの機銃掃射や、ロッキードと呼ばれる戦闘機の爆撃を間近で目撃。空襲中は、真っ赤になった空の下で必死に消火活動に励み、また焼けた米や牛肉のとても食べられない味を伝えてくれた。2人目の方は、特攻兵器「震洋」の乗組員として訓練。飛行機のパイロットを目指して訓練に励んでいるなか、上官から新兵器として紹介されたのが震洋。小型ボートの先に爆弾が取り付けられており、高速で敵戦艦に自爆攻撃する。志願者を募ったが、ほとんど全員が手を挙げ、震洋を目の前にした時も、特に何も感じなかったとのこと。国のためにと教育を受けてきたため、いまでは考えられないような兵器を前にしても、誰ひとり不満の声をもらさなかったという。
 戦争体験者の話はいまでは想像もできないようなことが多く、とても貴重だ。そして誰もが「もう戦争は繰り返してはならない」と願っている。今後も戦争体験者の高齢化は進み、貴重な話を聞ける人も少なくなるが、できる限り紙面で紹介していきたい。   (城)