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連載小説「風神雷神」が面白い

 本紙3面の連載小説、原田マハ著「風神雷神」が面白くなっている。今は、少年時代の俵屋宗達が織田信長の前に召し出され、大勢の大人が見守る中で筆をふるい、誰も見たことのない大きな白象の絵を描き出したところだ◆宗達の「風神雷神図屏風」は、中学校の美術教科書の表紙に使われていた。大きな白い袋を縄跳びの縄のように両手に高く掲げ、宙を走っていく風神。躍動感がありどこかユーモラスで、好きな絵だった。国宝に指定されている◆風神雷神といえばまずこれがイメージされるほど有名なのに、作者の宗達は謎の存在だという。物語を創る余地がたっぷりあるということだが、なんといっても本作の大きな特徴は、同世代の有名人「天正遣欧使節」の少年達とからめていること。信長・秀吉は最初は南蛮文化を奨励し、13~14歳の少年4人がローマへ遣わされた。見聞を広め現地の人々と交流したが、その後は禁教、経験を役立てられなかった。「漫画日本の歴史」を愛読していた子ども時代はこの少年使節にかなり心惹かれ、そのうちドラマになればいいと思っていた◆本作では、肥前のセミナリオで学ぶ幼い原マルティノの目の前に、不敵な目をして京都弁を喋る宗達少年が現れる。宗達の回想で出てくるのが天下人信長との邂逅。「余が見たことのない珍しいものを描け」との難題に象の絵で見事にこたえる。プロローグでヒロイン彩が幼い頃、京都の養源院で大きな象の絵に強く惹かれる場面があったが、本編に入って物語は400年以上さかのぼり、その絵が生まれた瞬間に来たのである◆同時代人である以外に特に接点のない宗達と少年使節、これからどんなドラマを展開するのか。美術と戦国乱世が交わるミステリーを、ぜひお楽しみ頂きたい。   (里)

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