玄界灘に浮かぶ沖ノ島が世界文化遺産に登録されることが決まった。島は現在も立ち入りが厳しく制限され、草木一本持ち出してはならないという掟があり、太古の祭祀跡がほぼ手つかずの状態で残る。「海の正倉院」ともいわれ、島から出土した指輪など8万点以上が国宝に指定されている。
 日本の世界遺産は現在までに、紀伊山地の霊場と参詣道、富岡製糸場と絹産業遺産群など16件、屋久島や知床などの世界自然遺産も含めると20件が登録されている。第1号は姫路城と法隆寺地域の仏教建造物で、いまから24年前に登録された。
 姫路城は築城から400年以上、一度も戦火にさらされず、白亜の漆喰と建築構造の完成度、バランスが傑作といわれ、日本の城郭の構造を最もよく表していることが評価された。宮本武蔵の妖怪退治、棟梁源兵衛の死など伝説も多く残っている。
 怪談の皿屋敷もこの姫路城が本家らしい。有名な江戸の「番町皿屋敷」とは少し異なるが、どちらも美人のお菊が奉公先の家宝の皿をなくした濡れ衣を着せられ、殺されたうえ井戸に投げ込まれ、夜になると井戸の底から、皿をかぞえる女の声が聞こえるという。
 魂魄この世にとどまりて、怨み晴らさでおくものか...。四谷怪談のお岩も可愛さあまって憎さ百倍、男に惨殺されるも成仏できず、化けて出てくる。これら古典の怪談は怖いというより、暑い夏をちょっと涼しく感じる季語のようなものか。聞く側も本気で怖いわけではない。
 本当に怖いのは現実の人間。毒物を飲ませて夫を殺害、同僚に睡眠薬、乳児に食塩を飲ませた女も逮捕され、人の業が渦巻くネットの世界には、現代のお菊か清姫か、おどろおどろしい女優霊が化けて出た。     (静)