梅雨の季節を彩ってくれる花といえばアジサイ、そしてアヤメや花菖蒲。近年アジサイは「母の日」のプレゼントとして人気が高いが、本来の花期が本格的に始まった◆日本は水に恵まれた国。雨の多くなる今の季節は、空気がしっとりを通り越して「じっとり」と憂鬱な気分になることもあるかもしれないが、アジサイや花菖蒲は、そんな雨の風景にもしっくりなじんで心に潤いをくれる花だ。先日は御坊市内のお宅で見事なアジサイ、別のお宅で満開の花菖蒲を取材させていただいた◆昔は額アジサイか手まり形ぐらいしかなかったが、今回の取材ではハーモニーに未来、フェアリーキッスにマジカルレボリューション、冬花火、ダンスパーティー...と、名前を聞くだけでも楽しくなった。花色も咲き方も実にさまざま。取材した日は明るい青空の下で花を楽しめたが、たとえ雨の日でもカラフルに心を浮き立たせてくれそうだ◆花菖蒲は、似た花であるアヤメが比較的すっきりと小ぶりの花を咲かせるのに比べ、大ぶりで波打つような形。深い紫色の幅広い花弁は、上質な布地をも思わせる。花色は古代紫と呼ばれる優しい赤紫、江戸紫と呼ばれる青紫、淡い紫色の模様が入った白と多彩。それぞれに違った風情の花が、品のある華やぎを感じさせてくれる◆花の時期のために、他の時期には地道な世話をする。気候に合わせ、たくさんの重い鉢を一つずつしかるべき場所に移動。アジサイなら土の質によって色を変えるので、土づくりが肝心になる。花菖蒲も、冬の間の手入れにより、この季節に美しい花を楽しめるという◆近畿地方も間もなく梅雨入りとみられるが、雨雲をしのぐ花があちこちで咲いてくれると思うと、日本の四季はやはり素晴らしい。  (里)