広島県の原爆資料館(平和記念資料館)を初めて訪れたのは、21年前ほど前、たしか二十歳のころだった。戦争や平和を考える目的ではなく、別のイベント目的で観光旅行の行き先として広島を選んだようにうっすら記憶している。それでも立ち寄った資料館で大きな衝撃を受けたことは忘れられない。原爆の威力のすさまじさ、悲惨さがリアルに伝わる写真や展示物を目の当たりにし、胸が締め付けられた。資料館を出たとき、戦争は絶対にしてはダメだ、日本人なら一度は訪れなければならない場所だと思ったことはいまでもはっきり覚えている。
 子どもたちにも見せておきたいと、再び訪れたのは4年前。展示物などが記憶と少し変わっていて、個人的には怖さの伝わり方が少し柔らかくなったように感じたが、それでも子どもには戦争の悲惨さが伝わったのは間違いない。
 71回目の原爆忌を迎えた広島には、ことし5月、現職としては初めてオバマ米大統領が訪問した。世界で唯一原爆を投下した国のトップが、唯一の被爆地を訪れたことは、非核へ向けた歴史的な一歩だったといえるだろう。懸念されるのは、被爆者の高齢化。平均年齢は80・86歳で前年をさらに上回ったという。生き証人の生の声を聴く機会は年々減っている。
 戦争はやってはいけないことは誰でも分かっている。それは過去からいまへと語り継いできたからにほかならない。書物やインターネットでもいい、体験者の声を聴くことは最も心に響く手段であろう。若者に、子どもたちに、体験者の声や書物に触れることの大切さを教えるのも、大人の責任。広島にもぜひ一度は足を運んでほしいと思う。(片)