和歌山県でインターハイの熱戦が繰り広げられているなか、国体開幕まで2カ月を切った。選手、関係者、応援団には大会を通じて、和歌山へ来てよかった、また来たいと思ってもらえるよう、県民挙げてのおもてなしで迎えたい。
 出張でも観光旅行でも、旅先で出会う地元の人の印象はそのまちのイメージに直結する。言葉も通じない海外ではなおさら、笑顔で親切に対応されれば、それだけでその国全体が好きになり、また訪れたくなる。
 終戦から70年の今年も、きょうから戦争体験者に話を聞く連載が始まった。第1回は師範学校時代、学徒動員として軍需工場で働き、戦争末期には御坊の空襲で命を落としかけた女性。ほか、旧満州で終戦後、ソ連軍の捕虜となって極寒の収容所で強制労働につかされた人など、全12回、11人の戦争体験者が登場する。
 一般に「シベリア抑留」といわれる強制労働を生き抜いた男性は、食べることしか頭になかった収容所生活を振り返り、連邦国家の各地の共和国から送り込まれてくる所長について、「ウクライナ人の所長だけは私たち日本人にやさしかった」という。
 ネタバレながら、その所長は異動で収容所を去る日の点呼で、「ここの生活はつらいだろうが、必ず生きて、全員元気で日本へ帰ってほしい」と言葉をかけてくれたという。あれから70年以上、男性はテレビでロシアとウクライナのニュースを見るたび、ウクライナを応援したくなるのだそうだ。
 訪れたこともない国をも好きになる一期一会。人の心に生き続けるおもてなしとは何も難しい話ではなく、家族や友人、職場の仲間ら身近な人と同様、相手の気持ちをくむ心こそが必要にして十分な要素になる。 (静)