ニワトリの在来種で田辺市龍神村原産「龍神地鶏」の個体数が減少し、絶滅が危惧されている。県養鶏研究所(日高川町船津)が調査したところ、平成24年3月現在で68羽。その後の保護活動で、現在は全国で300羽以上に増えているが、近親交配が進み繁殖しづらい状況だという。県では「効率のよい交配を研究し、後世に残せるように保護に取り組んでいきたい」と話している。
 龍神地鶏はニワトリの在来種で、日本鶏の一つ。原産地は田辺市龍神村。メスは1枚ずつの羽に黒い縁取りがあるのが大きな特徴。オスは地鶏に多くみられる「赤笹」という模様がある。地元の旧家に残る資料によると、300年前の江戸時代に飼育されていたという記録がある。オスは気性が荒く、闘鶏など観賞用として飼われていたとみられる。
 近年は養鶏を行う家が減り、個体数が減少。研究所では平成3年から3羽(オス1羽、メス2羽)の飼育に取り組んだこともあったが、増やすことはできなかった。平成19年に東京農業大学の岡孝夫研究員や秋篠宮殿下らが共同で執筆した論文に「龍神地鶏を保護すべき」と書かれていたことがきっかけで、保護活動の取り組みを再開。24年度に実施した県養鶏研究所の調査では、同研究所で飼育している7羽のほかには龍神村、岩出市、奈良県の愛好家4人が61羽を飼育しているだけだった。昨年春に龍神村の養鶏愛好家から7羽の成鶏や数十個の卵を譲り受けるなどして、現在は同研究所で154羽となっている。しかし、血縁関係のある個体がほとんどで、近親交配が進んでいる状態。「繁殖能力が低下しており、まだ絶滅の危惧から脱していない。種を保存するにはいろんな血が混ざらなければいけない」という。
 同研究所は広島大学日本鶏資源開発プロジェクト研究センターと共同で保存活動に取り組んでおり、遺伝子解析などを進めている段階。ことし3月には同研究所、龍神村の養鶏愛好家、広島大学、財団法人進化生物研究所(東京)で組織する龍神地鶏保存協議会も発足した。今後も遺伝子調査の結果を基に健全に繁殖させる計画を立て、個体数の増加に取り組んでいく。