「やはり例年より町内を訪れるお客さんは少ないですね」。
 日高川町の公的観光施設を管理・運営する㈱共立メンテナンス日高川営業所所長の西和洋さん(58)。台風がなければ、多くの川遊びの客でにぎわっていたはずの日高川を遠目に眺める。施設への客足を左右する日高川。ドーム下をはじめとする川遊びスポットはいずれも人影は少なめ。シーズン中はほぼ満杯となる川沿いのオートキャンプ場も被害で閉鎖したのも大きい。例年の10分の1というアユ釣り客も含め川を訪れる客が減れば、温泉を中心に施設利用客も減少、町内全体の入り込み客の減少にもつながっている。 「危険と思われているようで雨予報だとキャンセルが多い。道路は復旧しているのだが、工事中でアクセスが悪いという印象がある。被災地イメージの影響が大きい」と話す。
 台風による被害で同社が管理運営する11施設すべてが一時休業となった。多くの施設は数週間で営業を再開したものの、水没や温泉の湯元流失などで高津尾の温泉館鳴滝、きのくに中津荘別館、猪谷の療養温泉館が長期休業を強いられ、営業を再開できたのは7月になってから。
 昨年度の施設利用客は前年度比約6万人、売上で約5000万円減。今年度になっても利用客、売上とも例年より約12%落ち込んでいる。荒れている河川の回復が一番の願いだが、待ってはいられない。積極的な営業やインターネット事業の充実、イベント企画などで誘客に力を入れる。特にインターネット事業は、旅行専門誌や宿泊情報誌のネットに情報を掲載、若者から高齢者まで幅広い世代が予約してくれるよう取り組む。営業面では音楽など文化方面の関係者もターゲットにできないか模索、イベントでは四季折々の企画で新たな顧客獲得を目指す。効果も表れつつあり、夏場になって少しずつ客が戻ってきた。「もっと戻るスピードを速くして、一日でも早く台風前の状態にしたい。日高川には爪痕は残っていますが、元気で楽しい日高川町をどんどん発信して被災地イメージを払しょくします」と意欲を見せる。
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 日高川町に大きな被害をもたらした台風12号襲来から間もなく1年。産業別に被災地の現状を伝える。