東日本を襲った震災から、間もなく1年がたとうとしている。あのときを思い返してみると、震源地から遠く離れたみなべ町にいた。大津波警報が発令され、日高地方での動きをカメラに収めたあといつも通り印南町の自宅に帰宅。津波はここまでこないだろうと思いながらも、みんな避難しているのか気になり、高台の避難所を見に行った。役場職員が数人いて自主避難者の受け入れ態勢を整えていたが、避難者の姿はなく、誰も逃げていないのだから大丈夫と思ったのを記憶している。
 「日本人は同調性の傾向が強く、この同調性が災害時の避難行動を妨げる」との、ある大手新聞での記事が目にとまった。1年前の筆者の心の中が透けているような言葉だと、胸に突き刺さった。誰かが逃げているのか気になる、誰も逃げていないから逃げない、そんな思いを持った人もいただろう。では、この同調性を逆手に取ることもできる。誰かが逃げているから自分も逃げよう。こんな意識を植え付けることが、災害に強いまちをつくる。だから日ごろの訓練が大事だ。
 震度7の揺れ、10㍍の津波、いろんな想定で訓練が行われているが、どんな地震が起こるかよりも、どんな場面で起こるかを想定することが重要。親は出勤途中、子どもは登校途中の午前7時40分、子どもが下校途中の午後3時45分、両親が仕事に出て家族がバラバラになっている土曜日の午前11時ごろなど、具体的なシーンを想定した地域ぐるみの訓練が必要で、人に教わるより自分で考えることが大切だ。自宅近くの避難場所がどこか理解しただけでは不十分。マグニチュード9・0、そのとき自分は、家族はどこにいるのか、誰にも分からないのだから。  (片)