台風12号の降雨によりみなべ町清川地内の法手見トンネル(国道424号線)付近で発生した土砂崩れが「深層崩壊」だった可能性が高いことが、県の調査で分かった。山の斜面の深い部分から崩れる現象で、明治期(1868年)以降の143年間に全国で122件しか確認されていない。今回が深層崩壊だとすれば、県内では「7・18水害」以来58年ぶり。2次崩壊の恐れがあり、慎重な調査が求められる。
  深層崩壊は表層の厚さ2~3メートルの土砂だけが崩れるのではなく、その下の岩盤の部分が崩れる現象。風化して壊れやすくなった岩盤と豪雨が原因と考えられる。岩盤にできたひび割れなどに雨水がしみ込み、高まった水圧で岩盤がずれたりする。発生地域では、24時間の降水量が400㍉を超えている例が多いという。
 清川の土砂崩れは、9月4日午後2時ごろ発生。高さ約150㍍と約70㍍付近の2カ所から土砂が崩れ落ちた。このうち深層崩壊とみられているのは、法手見トンネル側の約150㍍から崩れ落ちた分。県は地質調査を進めている段階だが、「表面の土砂からではなく、もっと深い部分から崩れている。深層崩壊だったとみられる」という。
 国土交通省によると、降雨による深層崩壊が確認されているのは明治期以降に全国で122件(今回を除く)。県内では昭和28年の7・18水害の降雨が原因でかつらぎ町で発生した6カ所が確認されているだけ。清川の土砂崩れが深層崩壊だとすれば、全国的には平成17年9月に宮崎県や高知県で発生して以来6年ぶりとなる。このほか台風12号では奈良県、田辺市などでも大きな土砂災害が発生しており、深層崩壊の可能性があるとみられている。