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2014年2月 4日アーカイブ

 直木賞だけやっといて芥川賞やらないのもなんだから、やってみます。
 とはいっても、やっぱりエンターテインメント性を求める文学ではないから、私の理解力では、一応読んではみたけど「なんだこりゃ」というのも多々あり、「どなたにもお勧めできます!」という作品は(私の読んだ中では)数少ない...。
 
 そんな中で、書かれた時代を反映していて読み応えがあり、しかも分かりやすかった2冊について。

 「赤頭巾ちゃん気をつけて」(庄司薫著、中公文庫)。
 「時が滲む朝」(楊逸著、新潮文庫)。

 「赤頭巾ちゃん」は、1969年上半期の受賞作。
 当時の時代背景といえば(私はまったく知らない時代だけど)学生運動。
 主人公は著者と同名の高校生、庄司薫くん。
 彼を主人公とする作品はこれ以後、
 「さよなら怪傑黒頭巾」
 「白鳥の歌なんか聞こえない」
 「僕の大好きな青髭」
 と、全4作のシリーズになっており、「青髭」で闘争の時代は終焉に向かっていきます。

 「赤頭巾ちゃん」を実際に読んだのはもうかなり前なんですが、記憶をたどって書いてみると。
 過熱した時代をクールにシニカルに見つめながらも、実は自分なりにまともに真摯に向き合おうとする、頭のいい高校生の独白というかたちで全編が書かれる。
 理論の袋小路を彷徨し、心を荒ませてゆく薫くんを救ったのは――。

 一昨年、4冊とも新潮文庫から新たに刊行されました。
 「赤頭巾」は父に、「黒頭巾」と「白鳥」は高校の図書室で借りて読み、自分で買ったのは「青髭」だけなのでこの機会に3冊買おうかなと思ったんですがまだ買ってません。
 現在の10代、20代の人には「薫くんシリーズ」(栗本薫さんにもありますね)はどんな風に映るのか、いっぺん読んでみてほしいです。

 発表当時からサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」(野崎孝訳)との類似が取り沙汰されたそうですが、両方読んだ私には全然別物としか思えません。
 国も違うし主人公の人格も違うんだから、当たり前ですが。
 文体や主人公の状況設定や大まかな展開なんかに共通点があったって、そんなものは「細かいこと」。鼻の形や骨格が似ているからって同一人物とはいえないし、血縁関係があるともいえないのとおんなじで。
 作品としてのアイデンティティでいうと、読んでみて受けた印象はまったくの「別人」でした。
 大体、他の人の文体やアイデアを引き写しながら自分の作品を完成させるなんて、そんな不毛で面白くもない作業に時間と労力を費やすなんてことは私には信じられない。
 
 「時が滲む朝」は2008年上半期の受賞。
 この時点から20年近く前に起こった、中国天安門事件。
 その時代の渦中にいたごく普通の大学生達の感情、境遇の変化が生き生きとみずみずしく描かれています。
 日本語を母語としない著者が、平易な日本語を操って達意の文章にまとめ上げ、時代に刻される大事件を読みやすい中編の作品に結晶させた。
 凄い仕事だと思います。
 こういう作品が広く深く読まれることによって、国が違っても等身大の「人間」としての共感を築きあげていければ、それがいろんな場面で潤滑油になっていくのではと感じられました。
 主人公が尾崎豊の「I Love You」に心揺さぶられる場面は、とても印象的です。

 でも歴代受賞作品の一覧表をみていて、あーちょっと読みたいなと思っても、本屋さんにはないんですよねー。
 芥川賞・直木賞フェアとか銘打って、歴代受賞作を少しずつまとめて売り出してみたら、結構反響があるんじゃないかと思うんですが。

 3月1・2日には、第150回を記念して東京丸の内で「芥川賞&直木賞フェスティバル」が開かれるとか。
 芥川賞・直木賞作家の面々がトークショーを繰り広げるみたいで。
 いいなあ、東京に住んでたら行きたかったかも。

 

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プロフィール

サト 日高新報記者。文化関係等の取材、編集整理、連載随筆や投稿原稿の編集を担当。空いた時間が少しでもあれば、本か漫画を読まずにはいられない。料理や洗濯をしながらも、可能な限り本を手離せない真性活字中毒。常に面白い本の情報を求めています。音楽や映画、歌舞伎など舞台芸術も大好きです。ひのえうま生まれの女。

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